自分用の鍬を買ったおはなし。
農業大学校では、管理機や草刈機などの動力機、化成肥料や黒マルチ、支柱などは学校から提供されるものを使うことができる。が、それ以外の資材については自分で選択購入してプロジェクト演習を進める必要がある。
今回、畝作りの必需品である鍬を購入した。
先生からのアドバイスでは、全て鉄でできているものは2千円くらいからあって安いけど、すぐに錆だらけになるとのこと。なので、ステンレス製で先端に鋼がつけてあるタイプがおすすめとのこと。そして、ハードに使った時は、刃先を軽く研いでおけば切れ味を保てるらしい。
で、あれこれとインターネット上で探してみたのだけど、大きさや重さ、長さなど実物を見ないとどうにもピンと来ない。そこで、実際に店舗で見て買おうとホームセンターに行ってみたが、僕の住んでいる地域にあるホームセンターに置いてあるのは、鉄製の廉価なものばかり。。。
そこで、プロが行くような店を探してみた。が、これまた僕の住んでいる地域では建築資材をメインに扱っている店がほとんどで、鍬を扱っている店がない。最終的に行き着いたのは、金物屋。それも自宅からは遠い農業地域の中にある店。
日曜日の昼前の午後に2時間のロングドライブを決行。辿り着いた小さな金物屋は、ガラス越しに中を覗いてみても人の気配がない。恐る恐る扉を開けてこんにちは!と声をかける。と、奥から日に焼けた人懐っこそうなじいさんが出てきた。
何?
鍬を見にきました。
土は硬ぇのか?柔らけぇのか?
耕運機で耕した後の畝作りが中心なので、柔らかい土だと思います。
あー、なら、これだ。こいつなら間違いねぇと思うよ。
おすすめされたのは、堤製作所というところが作っている ”ステンレス姫鍬 君津48型” 。なんだか凄い名前である。が、僕は怯むことはない。事前の調べで、鍬は各地方の土や農業形態に沿って進化しており、その地方の名前を農機具の名前に付けた商品が多いことを知っていたからだ。
君津48型。形状はいわゆる平鍬で、刃は幅145cm、長さ270cm。柄の長さは約90cmで、刃との角度は72度。柄の部分に国産の朴の木が使われているそうで、全体の重量は1.1kgと軽く仕上げてある。黒ボク土が多い地域ではこれが合っているが、粘土質の地域では、硬くて粘りのある土に対応した鍬が向いているとのこと。
ステンレス部分は、軽く波形状がつけてあり、強度アップと土離れの良さを実現している、らしい。端っこに開けられているハートマークがちょっとだけラブリー。
先端には鋼が取り付けられている。製作時にガンガン叩いた跡?のようなものが残っていて、道具マニアとしてはシビれるポイント。
持ち手の端部には返しがついている。(いくつかの写真でレフ板当てるの忘れました。見えにくくてすみません。)
持ち手と刃の取り付けは、クサビや釘が使われておらず持ち手の太さ変化を利用したはめ込み。乾燥して木が収縮したらグラつきそうだけど、ちょっと水をかけてやれば木が膨張してまたキマるらしい。これはクサビを用いた固定方法でも同じで、春先にはチェックが必要らしい。
金物屋のじいさん曰く、この鍬を使う上での注意点は2つ。
1つ目は、硬い土やたけのこ掘りなどに使わないこと。道具はそれぞれ用途、得意分野があるのだ。個人的には万能だが機能が中途半端な道具より、専用に特化してその用途では使いやすいような道具が好きなので、満足。
2つ目は、バールのようなこじる使い方をしないこと。強度をあげる工夫はしているものの、こじる動作をすると歯の部分が曲がってしまうらしい。歯が曲がると使いにくくなるし、土離れも悪くなる。
その後もじいさんとあれこれ話をして、話題の切れ目には必ず1つ目の注意点に話が戻ってくることを4回ほど繰り返し、そろそろお暇することにした。
じいさん、ありがとう。
ー おまけ ー
鍬を買った時に草刈り鎌も選んでもらった。こちらもじいさんお墨付きの使いやすさで、毎日使ってるらしい。鋼付きの片歯になっていて、切れが悪くなったら外側から軽く砥石をかけると復活するとのこと。学校の先生曰く、草刈り鎌にもいろいろな形状があるが、対象となる草と個人の好みで決まるとのこと。以前田んぼをやっていた時に類似の形状で使いやすかった記憶があるので、たぶんこいつは僕に合っていると思う。
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